1限：微生物について

最近、巷では「塩麹」などの発酵食品が注目されていますが、この発酵食品に一役かっているのが微生物です。もろみ酢も泡盛が発酵することにより得られる副産物ですが、微生物の働きは欠かせない要素の一つとなります。そこで、高校コースではこの微生物ともろみ酢の関係を詳しくご紹介していきます。まずは1限目では、微生物についてご紹介します。

・微生物とは？

「微生物」はその名の通り、ごくごく小さな生物であり、一般的には「顕微鏡を通してみることのできる小さな生物」のことを言います。微生物には、私たちにとって最もポピュラーな“細菌”や“菌類”などの他に、“ウイルス”や“藻類”、“原生動物”などが存在します。みなさんがテレビや雑誌などで聞く微生物には、例えば「カビ」や「大腸菌」、「インフルエンザウイルス」などがあるかと思います。これらをカテゴリ別に分けると、「カビ＝菌類」「大腸菌＝細菌」、そして「インフルエンザウイルス＝ウイルス」であり、それぞれがまったく異なる微生物です。しかし、一般には非常にあいまいに取り扱われることが多いため、一番わかりやすい大きさの違いからご説明します。

・微生物の大きさ

1.菌類(真菌)

みなさんが冬にこたつで食べるミカン(私も大好きです)に生えるアオカビや、お風呂の目地に生えるいやなクロカビなど、いわゆるカビ類は菌類(細胞内に核のある真核生物といいます)に分類されます。身近なところでいうと、パン作りに役立つ酵母やキノコが菌類に含まれます。菌類の胞子の大きさは5～12μmほどで、私たちの髪の毛の太さ(0.1mm前後)の約100分の1の大きさになります。カビ胞子自体は目に見えませんが、色がある胞子や菌糸の場合、繁殖した状態は目で見ることができます。

2.細菌

細菌は菌類と大きく異なる原核生物(細胞内に核が無い)で、大腸菌や納豆菌、サルモネラ菌などが細菌の仲間です。家庭でよくあるのは台所やお風呂場のぬめりは、細菌が原因です。菌糸やキノコなど菌類の多くは多細胞(からだが多くの細胞からできている生物)ですが、細菌は基本的に単細胞生物(からだが1個の細胞からできている生物)です。大体の最近は0.5～5μm前後の大きさで菌類よりも一桁程度小さいサイズです。

3.ウイルス

受験時期に猛威をふるうインフルエンザウイルスは、最近よりもさらに小さく、100nm程度とかなりの小ささです(nm：1μmの1000分の1)。また最近大気汚染で話題に上がることが多いPM2.5よりも、小さな粒子です。菌類と細菌は細胞を持っていますが、ウイルスは細胞を持っていないため、自己増殖ができません。そのため、ウイルスは他の生き物の細胞に侵入して、そこで増殖します。

このように、一口に微生物といっても、大きさや生存方法などがまったく異なる生物が含まれています。しかし一般にはこれらの菌類や細菌などは「雑菌」や「菌」として総称されています。でもみなさんはよく「抗菌・除菌・殺菌」なんて耳にしますよね？これらのいうところの菌って、これまでの分類紹介では細菌なの？菌類なの？なんなの？っていうところ、気になると思います。次の項目では、抗菌や除菌についてご紹介していきます。

細菌に効果的な「抗菌」と「除菌」

みなさんは「抗菌加工」って聞いたことがありますか？最近では手すりや壁などの加工によくみられますよね。では、この抗菌加工の「菌」ていったいこれまでの分類では何の菌を表すのでしょうか(タイトルに入れちゃいましたが…笑)？経済産業省では、抗菌加工製品について「(抗菌加工した)製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」をガイドラインで発表しています。ということは、抗菌とは大腸菌などの細菌の増殖を抑制するということなのですね。ちなみに、加工製品の抗菌試験では、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの決められた最近が利用されているそうです。一方、スプレーやシートなどで知られる「除菌」はどうでしょうか？この「除菌」は洗剤・石鹸公正取引協議会が「物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を有効数減少させること」と定義しています。一般には、この教会が定めた規格試験に合格することで、除菌効果をうたうことができます。また、この規格試験は大腸菌と黄色ブドウ球菌を100分の1以下に減少させる能力のことを言いますので、除菌も抗菌同様に「細菌」に対する効果のことをいいます。 ※ちなみにカビを対象としている場合には「防カビ」と表記されますので注意してみてください。

細菌に効果的な「抗菌」と「除菌」

抗菌、除菌はわかったけど、じゃあ消毒や殺菌は？と思う方もおられるかと思います。これらの用語も、とてもよく似た印象ですね。そもそも「殺菌」と「消毒」は医薬品や医薬部外品での利用のみが認められているもので、洗剤や消臭スプレーなどでは使うことができません。そのため洗剤などでは除菌や抗菌といった用語を使っています。「消毒」というのは、目的箇所から病原微生物の数を減らして無害にすることです。つまり、そこにいる微生物を殺さなくとも、除去したり有害な能力を減らすことで、無害化させることも消毒に含まれています(「消毒殺菌」は消毒のために殺菌を行うとった表現です)。一方、「殺菌」と「滅菌」は、カビ・細菌・ウイルスなどの微生物を死滅させることです。つまり消毒と違って除くだけじゃなくて殺さなくてはならないんですね。特に「滅菌」は100％微生物を死滅させることを目的としており、ISO(国際標準化機構：国際間の取引をスムーズにするために共通の基準を決める機関)で規格化されています。「殺菌」は、微生物を死滅させる点は滅菌と同じですが、具体的な規格や規定はなく厳密に有効性が保証されているわけではありません。みなさんもみかけることが多いかと思いますが、言葉を知っておくことで、それぞれの製品を有効利用できるといいですね。

いかがでしたでしょうか？少しは微生物が身近になったでしょうか？抗菌、除菌などという記事もご紹介したので、ちょっと不安になった方もいるかもしれませんね。でも、微生物は何も有害なものばかりでなく、私たちの生活に身近で、欠かせない存在にもなっています。それは例えばパン作りや醤油や味噌などの発酵食品に欠かせない酵母や、普段の生活を豊かにするお酒造りに必要な麹菌などがあります。次限は、この発酵と微生物の関係についてご紹介します。